【インソールのなぜ?シリーズ②】なぜ「動いた状態の足」を見ないとインソールは作れないのか|距骨下関節・前足部・アーチ・歩行動作の評価とは何か
みなさまこんにちは!中央区八丁堀で膝の痛みに特化した治療院「脚の専門院リネアル」の見澤です!
前回の第1回記事では、「O脚だから外側ウェッジ」という単純処方の限界と、足型計測(静的評価)だけでは動作中の荷重パターンが反映されないことをお伝えしました。
今回は、その続き。では実際に「何を・どう評価すれば」正しいインソールが作れるのか——機能解剖学に基づいたインソール処方の考え方を、できる限りわかりやすくお伝えします。
「自分の足はどのタイプなんだろう?」と考えながら読んでいただけたら幸いです。
目次
1.静的評価と動的評価——同じ足でも「静止時」と「歩行時」で何が変わるのか
2.評価の4つの柱
3.歩行動作との統合——足だけ見ても作れない理由
4.同じO脚でも処方は真逆になる——評価で変わる処方の実例
5.次回予告|実際にどんなプロセスで作るのか
6.よくある質問(FAQ)
7.まとめ
8.おわりに
1. 静的評価と動的評価——同じ足でも「静止時」と「歩行時」で何が変わるのか

まず、前回お伝えした「静的評価の限界」を、もう少し具体的に掘り下げます。
足型計測でわかるのは、椅子に座った状態・または静止して立った状態の「その瞬間の足の形」です。これを静的評価と呼びます。
一方、膝痛が実際に起きるのは「動いているとき」です。一歩踏み出す瞬間、体重がかかる瞬間、かかとが地面から離れる瞬間——この一連の動作の中で、足は複雑に形を変えながら動いています。これを評価することを動的評価と呼びます。
静止時と歩行時で足は別物になる
驚くことかもしれませんが、同じ足でも静止時と歩行時では動きがまったく異なることがあります。
たとえば、静止して立ったときには足のアーチがしっかり保たれているように見えても、歩行中に体重がかかった瞬間にアーチが崩れ落ちる方がいます。逆に、静止時には過回内(扁平足傾向)に見えても、歩行時には過回外方向に動く方もいます。
静止時の形だけで「この足には○○が必要」と判断し、インソールを作ってしまうと——歩いたときに「何か違和感がある」「かえって痛くなった」という事態が起きます。
インソールは歩行中に機能するものです。だからこそ、歩行中の足を評価しなければ作れません。
これが、機能解剖学に基づいたインソール処方の出発点にある考え方です。
2. 評価の4つの柱
では、実際に何を評価するのか。機能解剖学的なインソール処方では、大きく4つの柱を評価します。専門的な言葉が出てきますが、できる限りわかりやすく解説しますので、「自分の足はどうかな」と考えながら読んでみてください。
柱① 距骨下関節の評価——「足首の要」が崩れると膝まで変わる
距骨下関節(きょこつかかんせつ)とは、かかとの骨(踵骨)と足首の骨(距骨)の間にある関節です。聞き慣れない名前かもしれませんが、足部アライメントの「要(かなめ)」とも言える重要な関節です。
この関節は、足が地面に着くときに内側に傾いたり(回内)、外側に傾いたり(回外)する動きを担っています。正常な歩行では、かかとが地面についた瞬間にわずかに回内し、蹴り出しに向けて回外していく——という流れが起きています。
問題が起きるのは、この動きが過剰または不足したときです。
距骨下関節が過度に回内(内側に傾き過ぎ)すると、下腿骨が内旋し、連鎖的に膝が内側に引き込まれます(ニーイン)。逆に回外方向の動きが強すぎると、外側への荷重集中を招きます。
インソールの処方において最初に評価すべきは、この距骨下関節がどの位置で機能しているかです。「回内しすぎているのか」「回外方向に偏っているのか」「中立位で機能できているか」——これによって、インソールで補正すべき方向がまったく変わります。
柱② 後足部の評価——かかとの傾きが膝の荷重を決める
後足部とは、かかと(踵骨)を中心とした足の後ろ半分のエリアです。
後足部の傾き(内反・外反)は、膝への荷重分布に直接影響します。かかとが内側に傾いている(後足部内反)場合、足部全体が内側荷重になりやすく、膝内側への集中荷重を助長します。かかとが外側に傾いている(後足部外反)場合は、逆に外側への荷重偏在が起きます。
ここで重要なのは、後足部の傾きを「静止時」と「荷重時」の両方で評価することです。
立っていないときにかかとがまっすぐに見えても、体重をかけた瞬間に内側に倒れ込む方がいます。この「荷重時の変化」を見逃すと、インソールの補正方向を誤ります。
柱③ 前足部の評価——つま先側の傾きが歩行パターンを変える
前足部とは、足の指の付け根から先のエリアです。
前足部には「内反」と「外反」という傾きのパターンがあります。
前足部内反とは、足の内側(親指側)が外側(小指側)より高く傾いている状態です。この場合、地面に足全体を接地させるために、足全体が内側に回内方向へ倒れ込みます。結果として過回内が起き、膝の内側荷重を助長します。
前足部外反とは、逆に小指側が高く傾いている状態です。この場合、歩行時に外側への荷重偏在が起きやすくなります。
前足部の評価が重要なのは、後足部だけを補正してもこの前足部の傾きが残っていると、歩行中に代償的な動きが起きてしまうからです。後足部のかかとをまっすぐ補正しても、前足部に内反があれば、歩行の蹴り出し局面で足が崩れます。インソールは後足部だけでなく、前足部まで含めた足全体を設計する必要があります。
柱④ アーチ形状の評価——静止時と荷重時で崩れ方が変わる
足のアーチには主に3つあります。
・内側縦アーチ(土踏まず):最もよく知られるアーチ。内側の衝撃吸収を担う
・外側縦アーチ:足外側のアーチ外側の安定性を担う
・横アーチ:足の幅方向のアーチ。前足部の荷重分散を担う
アーチ形状の評価で重要なのは、「静止時のアーチ」と「荷重時のアーチ」の差を見ることです。
静止時にアーチが保たれていても、体重がかかったときに崩れ落ちる「動的アーチ崩壊」を起こしている方がいます。この場合、インソールでアーチをサポートする設計が必要ですが、サポートの高さ・硬さ・位置は個人の崩れ方によって変わります。
逆に、静止時に扁平に見えても「もともとそういう足の形」であり、歩行時に機能的には問題ない方もいます。見た目の扁平だけで「アーチサポートが必要」と判断するのは早計です。
3. 歩行動作との統合——足だけ見ても作れない理由

4つの柱を評価しても、それだけではまだ不十分です。足部の評価は、必ず歩行動作全体の中に統合されなければなりません。
足部の動きは膝・股関節・骨盤に連鎖する
足部は単独で動いているわけではありません。地面に足が着いた瞬間から、足首・膝・股関節・骨盤・体幹へと、力と動きが連鎖していきます。これを運動連鎖と呼びます。
たとえば、距骨下関節が過回内すると下腿骨が内旋します。下腿が内旋すると膝が内側に引き込まれます(ニーイン)。膝がニーインすると、股関節も内旋方向に引き込まれ、骨盤が傾きます。
この連鎖が逆方向にも成立します。股関節外転筋(中殿筋)が弱く骨盤が傾くと、大腿骨が内旋し、膝がニーインし、足部が過回内方向に引き込まれます。
「足部の問題が膝を傷めているのか」「骨盤・股関節の問題が足部に波及しているのか」——この方向性を歩行観察で見極めることが、インソールの処方方向を決める鍵です。
足部だけに問題がある場合はインソールで足元から修正できます。しかし骨盤・股関節レベルの問題が主因の場合、インソールだけでは根本には届きません。理学療法による筋力強化・アライメント修正との組み合わせが必要になります。
歩行観察で見るべきポイント
歩行動作の評価では、以下のポイントを観察します。
着地の瞬間(踵接地)
かかとが地面に着いた瞬間に膝がどの方向に動くか。内側に崩れるニーインが起きているか。膝が外側に押し出されるラテラルスラストが起きているか。
荷重応答期(体重が乗る瞬間)
体重が移動するにつれて足部のアーチがどう変化するか。距骨下関節はどの方向に動いているか。
蹴り出し(つま先離地)
蹴り出しの瞬間に足のどの部分から離地しているか。外反母趾・タコ(胼胝)の位置は荷重パターンを示す重要な情報。
これらを総合して初めて「この人には、足部のどこをどの方向にどれだけ補正するインソールが必要か」という処方が組み立てられます。
4. 同じO脚でも処方は真逆になる——評価で変わる処方の実例
「O脚だから全員に外側ウェッジ」が誤りである理由を、具体的な例でお伝えします。同じ「O脚で膝の内側が痛い」という訴えでも、評価結果によって必要な処方がまったく変わります。
タイプA|外側ウェッジが適切なケース
評価結果の特徴
・距骨下関節はほぼ中立位で機能している
・後足部に軽度の内反あり
・前足部は正常範囲内
・歩行時のラテラルスラストなし
・足部過回内なし
処方の方向性
かかとの外側を高くする外側ウェッジが有効。内側への集中荷重を足元から外側にシフトさせる。
タイプB|内側アーチサポートが優先なケース
評価結果の特徴
・距骨下関節の過回内が著明
・荷重時に内側縦アーチが大きく崩れる(動的アーチ崩壊)
・前足部内反あり
・歩行時にニーインが誘発されている
処方の方向性
外側ウェッジより先に、内側縦アーチのサポートを優先。前足部内反へのポスティング(補正材)を加え、アーチが崩れることで誘発されるニーインを抑制する。外側ウェッジをいきなり入れると、すでに過回内している足をさらに内側に誘導するリスクがある。
タイプC|前足部補正が必要なケース
評価結果の特徴
・後足部はほぼ正常
・前足部内反が著明
・蹴り出し時に足が内側に崩れる
・歩行の後半(蹴り出し局面)でニーインが発生している
処方の方向性
かかと(後足部)への外側ウェッジではなく、前足部内反へのポスティングを優先。蹴り出し局面での足の崩れを補正することで、歩行後半のニーイン・膝内側ストレスを軽減する。
このように、同じ「O脚・内側膝痛」という訴えでも、評価結果によって処方は180°変わることがあります。「O脚だから外側ウェッジ」という処方では、タイプBとCには適切に対応できません。 それどころか逆効果になるリスクさえあります。
「自分はどのタイプだろう?」と気になった方——それを判断するためには、やはり動的評価が欠かせません。
5. 次回予告|実際にどんなプロセスで作るのか
「評価すべきことはわかった。では当院では実際にどんな手順でインソールを作っているのか」
次回・第3回では、当院のインソール処方の実際のプロセスをお伝えします。評価から仮合わせ・歩行確認・調整というプロセスの流れと、理学療法・鍼灸との連携によって「インソールの効果を持続させる」考え方を解説します。
また、「インソールをいつまでも使い続けるのか、それとも卒業できるのか」という、多くの方が気になる疑問にもお答えします。
6. よくある質問(FAQ)
Q:距骨下関節や前足部・後足部の評価は、どこで受けられますか?
A: 機能解剖学的なインソール処方を行っている理学療法士・義肢装具士のいる施設で受けられます。「動作分析(歩行分析)を行ったうえでインソールを作成している」かどうかを、事前に確認することをお勧めします。足型計測のみを行っている施設では、今回ご説明した動的評価が行われていない可能性があります。当院でも機能解剖学に基づいた評価・インソール作成を行っていますので、お気軽にご相談ください。
Q:自分がタイプA・B・Cのどれに当てはまるか、自分で判断できますか?
A: 完全な自己判断は難しいですが、いくつかのヒントがあります。「歩いているときに膝が内側に崩れる感じがする(ニーイン)」という方はタイプBやCの可能性があります。「歩くと膝が外側に押し出される感じ・膝が外にブレる感じがある」という方はラテラルスラストの可能性があり、外側ウェッジが逆効果になるリスクがあります。ただし正確な判断には歩行観察・触診・荷重評価が必要です。「今使っているインソールが合っているか確認したい」という目的でも、ぜひ一度評価を受けてみてください。
Q:今使っているインソールが「どのタイプ向け」か確認する方法はありますか?
A: 現在使用中のインソールを持参していただければ、形状・素材・補正方向から「どのような意図で作られたインソールか」をある程度評価できます。また、実際にそのインソールを入れた状態で歩行を観察することで「現在のインソールが歩行中の荷重パターンにどう影響しているか」を確認できます。「効いているかどうかわからない」「合っているか不安」という方は、ぜひインソールを持参して相談してみてください。

7.まとめ
・機能解剖学的なインソール処方では「距骨下関節・後足部・前足部・アーチ形状」という4つの柱を評価する
・静止時の評価だけでは「歩行中に足がどう動くか」はわからない。動的評価が処方の質を決める
・足部の評価は歩行動作全体統合して初めて意味を持つ
・同じO脚・同じ内側膝痛でも、評価結果によって処方は様々で、まったく異なる方向性になる
・「足部の問題が膝を傷めているのか」「股関節・骨盤の問題が主因なのか」を見極めることが、インソール単独で対応できるかどうかの分岐点になる
8.おわりに
今回は少し専門的な内容をお伝えしました。距骨下関節・前足部・後足部……と聞き慣れない言葉が続いたかもしれませんが、お伝えしたかったことはひとつで、
足は、静止した状態ではなく「動いた状態」で評価しなければ、本当のことはわからない。
ということです!
そして、同じO脚に見えても、足の中では人によってまったく違うことが起きている。だからこそ「O脚=外側ウェッジ」という一律の処方では、多くの方に合わないインソールが生まれてしまうのです。
「自分の足がどのタイプか気になった」「今使っているインソールが合っているか確認したい」、「自分の動的アライメントに適した専用のインソールを」という方は、ぜひ一度ご相談ください!
次回・第3回では、当院のインソール処方の実際のプロセスと、理学療法・鍼灸との連携についてお伝えします。引き続きお読みください!
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